保育園から「熱はありませんが咳が続くのでお迎えをお願いします」と連絡が来るのは、国のガイドラインが咳を発熱とは別の項目として扱っているからです。こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」の別添3は、咳について保護者へ連絡することが望ましい場合を4つ挙げていて、そのどれにも体温の条件が入っていません。体温が平熱に近くても、咳で眠れない状態なら連絡の対象になります。
保育園で熱がないのに咳で呼び出されるのはなぜですか
咳の判断の目安に体温が含まれていないからです。ガイドライン別添3「⑤咳の時の対応」は、保育中に保護者へ連絡することが望ましい場合として次の4つを挙げています。
- 咳があり眠れないとき
- ゼイゼイ音、ヒューヒュー音があるとき
- 少し動いただけでも咳が出るとき
- 咳とともに嘔吐が数回あるとき
同じ別添3の「②発熱時の対応」は、連絡が望ましい場合の冒頭に「38℃以上の発熱があり」という条件を置いています。発熱の項目は体温が入口になり、咳の項目は咳そのものと呼吸の様子が入口になります。園が検温して平熱だったとしても、昼寝の時間に咳で目を覚ました、室内で走った直後に咳込んだという様子が見られれば、咳の項目に当てはまります。
咳の対応・ケアの欄には、別室で保育する場合の書き方も出てきます。
発熱を伴う時、(中略)複数の子どもに咳のほか類似の症状がみられる場合には、別室で保育をする。
熱がなくても、同じクラスで咳の子どもが何人も出ていれば別室での保育になります。園が「熱はないのですが別室でみています」と伝えてくるのは、この記述に沿った対応です。
ガイドラインは発熱の項目の冒頭で「子ども一人一人の元気な時の『平熱』を知っておくことが重要です」と書き、発熱時の体温はあくまでも目安で、個々の平熱に応じて個別に判断すると説明しています。体温の数字だけで預かるかどうかが決まる作りになっていません。
熱のない咳で登園を控えたほうがよい症状はどれですか
ガイドラインは、登園前に保護者から相談を受けた場合の対応として、咳について「登園を控えるのが望ましい場合」を挙げています。体温の条件はここにも入っていません。
- 夜間しばしば咳のために起きる
- ゼイゼイ音、ヒューヒュー音や呼吸困難がある
- 呼吸が速い
- 少し動いただけで咳が出る
「呼吸が速い」を判断する数字も同じページに載っています。1分あたりの正常呼吸数の目安は、新生児が40〜50回、乳児が30〜40回、幼児が20〜30回です。呼吸の様子が気になるときはこの回数を目安にすると書かれています。朝、子どもが寝ている間に胸の動きを1分数えておくと、園に伝えられる情報になります。
呼吸が苦しいときの観察のポイントとして、ガイドラインは呼吸が速い(多呼吸)、肩を上下させる(肩呼吸)、胸やのどが呼吸のたびに引っ込む(陥没呼吸)、息苦しくて横になることができない(起坐呼吸)、小鼻をピクピクさせる呼吸(鼻翼呼吸)、吸気に比べて呼気が2倍近く長くなる、呼吸のたびにゼイゼイ音・ヒューヒュー音がある(喘鳴)、走ったり動いたりするだけでも咳込む、会話が減る・意識がもうろうとするを並べています。熱の有無がどこにも出てきません。
至急受診が必要と考えられる場合には、犬の遠吠えのような咳が出るとき、突然咳きこみ呼吸が苦しそうになったときが挙げられています。突然咳きこんで呼吸困難になったときは異物誤えんの可能性があるため、異物を除去して救急車を要請する、という注記が付いています。
この一覧はガイドラインが示す目安です。実際に受診が必要かどうかの判断は医師が行います。迷ったときは、かかりつけ医か自治体の相談窓口に、咳の様子と呼吸数をそのまま伝えてください。
熱が下がっても咳が残っていると登園できませんか
病気の種類によって決まります。咳が残っていても登園できる病気と、咳が治まるまで登園できない病気があります。
新型コロナウイルス感染症の登園のめやすは「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過すること」です。ここで言う症状軽快とは、解熱剤を使用せずに解熱し、かつ呼吸器症状(咳や息苦しさ等)が改善傾向にある状態を指します。熱が下がっていても咳が改善傾向になければ、症状軽快の日を数え始められません。熱が下がったのに登園できない日が続くのは、この定義によるものです。
咳そのものが登園のめやすに書かれている病気もあります。RSウイルス感染症は「呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」、マイコプラズマ肺炎は「発熱や激しい咳が治まっていること」です。マイコプラズマ肺炎についてガイドラインは、咳が徐々に激しくなり数週間に及ぶこともあると説明しています。熱が1日で下がっても咳が長引く病気がある、という前提で予定を考えておくと安心です。
同じ病気でも自治体の資料で書き方が違います
RSウイルス感染症の登園のめやすを、2つの自治体の資料で読み比べると言葉が違います。春日井市の「令和7年度 保育園のしおり(運営規程兼重要事項説明書)」は「重篤な呼吸器症状がとれてから」と書いています。多摩市のサイトに載っている「保育園に、元気に通うための健康ガイドブック」(多摩市保育協議会 保健師・看護師部会)は「咳やゼロゼロなどの呼吸器症状が消失し、全身状態が良いこと」と書き、感染しやすい期間を「咳やゼロゼロなどの呼吸器症状のある間」としています。
「重篤な症状がとれてから」と「症状が消失し」では、軽い咳が残っている子どもの扱いが変わります。登園できる日を自分で判断せず、入園時に配られたしおりか、自治体が出している案内の表を見てください。登園届や登園許可証が必要かどうかも自治体ごとに違います。感染症ごとの提出書類は保育園の登園許可証はいつ必要?感染症別の登園のめやす一覧で整理しています。
鼻水だけのときは保育園を休む必要がありますか
鼻水だけを対象にした連絡や登園の目安は、国のガイドラインに置かれていません。別添3の症状別の対応は、①子どもの症状を見るポイント、②発熱、③下痢、④嘔吐、⑤咳、⑥発しんの6項目で、鼻水の項目がありません。鼻水は①「子どもの症状を見るポイント」の【鼻】に、「鼻水がでる」「鼻づまりがある」「小鼻がピクピクしている(鼻翼呼吸)」として挙げられています。症状に気づくための観察項目として扱われています。
ガイドラインは0〜1歳の乳幼児の発熱の特徴として「咳や鼻水などのかぜにみられる症状がなければ、水分補給を十分に行ない、涼しい環境に居ることで、熱が下がることがある」と書いています。熱と咳・鼻水をあわせて見る、という書き方です。鼻水が続いて哺乳量や水分補給が減ると脱水症になりやすいという注意も書かれています。
多摩市の健康ガイドブックは、新型コロナウイルス感染症の出席停止日数の数え方を説明したあとに「咳や鼻水などの辛い症状が軽快した日からさらに1日以上経過してから登園するようにしましょう」と書いています。この注記は新型コロナウイルス感染症についてのものです。鼻水が出ているだけで休むという決まりにはなっていません。
鼻水がどのくらい出ていたら預かるかという線は、公的な資料に書かれていません。園が独自に決めている部分です。自分の園の運用は、しおりを確認するか担任の先生に直接聞いてください。
園から連絡が来たときに何を確認すればよいですか
電話で聞いておく内容を先に決めておくと、仕事中でも短時間で話が終わります。ガイドラインの項目に沿うと、確認することは4つです。
- どの症状で連絡したか(咳で昼寝ができなかった、喘鳴がある、少し動くと咳込む、咳とともに嘔吐した)
- 呼吸の様子(1分あたりの呼吸数、肩呼吸や陥没呼吸が見られるか)
- 別室で保育しているか
- 水分が摂れているか
ガイドラインの咳の対応・ケアには、水分を少量ずつ頻回に補給する、咳込んだら前かがみの姿勢をとらせて背中をさするか軽いタッピングを行う、乳児は立て抱きにする、午睡中は上半身を高くする、と書かれています。園から「上半身を高くして寝かせています」と説明があるのは、この対応です。帰宅後の過ごし方としてそのまま使えます。
何℃で、どの症状でお迎えを頼むかという具体的な線は、園が決めます。春日井市のしおりは、その他の項目に「保育中に発熱・発病をした場合は連絡しますので、迎えに来てください」と書いていて、体温の数字は書かれていません。同じしおりには「日頃から災害・病気など緊急時に迎えに来られる体制をつくっておいてください」という記載もあります。迎えに行ける人を複数決めて、連絡する順番を園に伝えておくと、呼び出しの電話が仕事の山場に重なっても動けます。
入園時の重要事項説明書を見ても連絡の基準が書かれていない園もあります。その場合は「何℃以上、どの症状でお迎えの連絡をしますか」と直接聞いてください。登園してよい日の判断で迷ったときも同じで、園と自治体の案内が答えを持っています。朝の登園をいやがる日が続くときの対応は登園しぶりはいつまで?休ませる判断と園への伝え方にまとめています。
よくある質問
保育園は何度の熱でお迎えの連絡をしますか
国のガイドラインは「38℃以上の発熱があり」、元気がなく機嫌が悪い、咳で眠れず目覚める、排尿回数がいつもより減っている、食欲なく水分が摂れないという様子があるときを、保護者への連絡が望ましい場合としています。37.5℃という数字は、登園を控えるのが望ましい場合の「朝から37.5℃を超えた熱があることに加えて、元気がなく機嫌が悪い、食欲がなく朝食・水分が摂れていないなど全身状態が不良である場合」に出てきます。お迎えを頼む体温の線は園が決めるため、入園時のしおりを確認してください。
熱が37.8℃ありますが元気です。登園できますか
ガイドラインは、朝から37.8℃の熱があり機嫌が悪く食欲がないなど全身状態が不良な場合は登園を控えるのが望ましい、37.8℃の熱があるが朝から食欲があり機嫌も良いなど全身状態が良好な場合は一律に登園を控える必要はない、と例示しています。体温はあくまで目安で、個々の平熱に応じた個別の判断が必要と書かれています。園ごとに預かる基準があるので、朝のうちに園へ連絡して体温と様子を伝えてください。
咳だけで保育園を早退することはありますか
あります。国のガイドラインが咳について挙げている連絡の目安4つに、体温の条件が入っていません。咳があり眠れない、ゼイゼイ音・ヒューヒュー音がある、少し動いただけでも咳が出る、咳とともに嘔吐が数回あるのいずれかに当てはまれば、熱がなくても連絡の対象になります。
熱はないのに咳で休ませるか迷ったときは何を見ればよいですか
ガイドラインが登園を控えるのが望ましいとしている4つの様子を見てください。夜間しばしば咳のために起きる、ゼイゼイ音・ヒューヒュー音や呼吸困難がある、呼吸が速い、少し動いただけで咳が出る、です。呼吸数の目安は1分あたり乳児30〜40回、幼児20〜30回です。判断に迷う状態なら、受診して医師に確認してください。
熱が下がれば咳が残っていても登園できますか
病気によって違います。新型コロナウイルス感染症は、発症後5日を経過し、かつ症状が軽快した後1日を経過することが登園のめやすで、症状軽快には呼吸器症状が改善傾向にあることが含まれます。RSウイルス感染症は呼吸器症状が消失し全身状態が良いこと、マイコプラズマ肺炎は発熱や激しい咳が治まっていることが登園のめやすです。自治体によって書き方が違うので、園のしおりで確認してください。
この記事を書いた人:小泉太郎(ZuMy株式会社 代表取締役CEO)。保育園の入園書類と園児情報を電子化するサービスを提供し、自治体や園が配る入園のしおり・健康に関する案内を日常的に読み比べています。この記事は医師による診断や治療方針を示すものではありません。受診の判断は医療機関にご相談ください。
出典
- こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版)」2023年5月一部改訂(確認日: 2026年10月23日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/c60bb9fc/20230720_policies_hoiku_25.pdf
- 多摩市保育協議会 保健師・看護師部会「保育園に、元気に通うための健康ガイドブック」(多摩市ウェブサイト掲載、確認日: 2026年10月23日)https://www.city.tama.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/540/GuideR8.pdf
- 春日井市「令和7年度 保育園のしおり(運営規程兼重要事項説明書)」(確認日: 2026年10月23日)https://www.city.kasugai.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/034/611/R7hoiku_shiori.pdf

