保育園の入園に予防接種を終えていることを条件とする規定は、国の制度に見当たりません。予防接種法第9条は、A類疾病の定期接種について、保護者が子どもに受けさせるため必要な措置を講ずるよう努める義務と定めています。入園のときに園や自治体が求めるのは、母子健康手帳の記録を見ながら、接種したワクチンと回数を書類に書くことです。
定期接種とは、予防接種法に基づいて市区町村が実施する予防接種です。子どもが受ける定期接種はすべてA類疾病に当たり、市区町村が接種を積極的に勧め、保護者が受けさせるよう努める義務が置かれています。
保育園の入園に予防接種は必要ですか
予防接種を受けていないと入園できない、という国の決まりはありません。予防接種法第9条第1項は定期接種の対象者について「これらの予防接種を受けるよう努めなければならない」、第2項は16歳未満の子どもの保護者について「その者に定期の予防接種であってA類疾病に係るもの……を受けさせるため必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と書いています。努める義務であって、接種の完了を入園の要件とする記述は、予防接種法にも、こども家庭庁の保育所における感染症対策ガイドラインにも見当たりません。
同じガイドラインは、保育所に対して次のように求めています。
入所前に受けられる予防接種はできるだけ済ませておくことが重要である。
園に求められているのは、子どもの予防接種歴と感染症の罹患歴を把握し、受けていないワクチンがある保護者に接種できるワクチンを知らせることです。ガイドラインは「チェックリストを作成するなどして、子どもの予防接種歴及び罹患歴を把握します」と書いています。未接種を理由に登園を断る運用は、ガイドラインに書かれていません。
入園の要件そのものは市区町村と園が決めます。自分の子どもが通う園のことは、自治体の入園案内と園の入園説明で確認してください。園の感染症への備え全体は保育園の感染症対策とは?登園のめやすと園の対応にまとめています。
入園までにどのワクチンを受け終えますか
ワクチンごとに標準的な接種期間が決まっています。厚生労働省の定期接種実施要領(改正後全文・令和8年6月1日改正)が定めている乳幼児期の主なワクチンの標準的な接種期間は、次のとおりです。
- 五種混合(ジフテリア・百日せき・急性灰白髄炎・破傷風・Hib感染症)… 初回接種は生後2月から生後7月に至るまでが標準的な接種期間。20日以上、標準的には20日から56日の間隔で3回。追加接種は初回接種終了後6月以上、標準的には6月から18月の間隔で1回
- 小児の肺炎球菌感染症 … 初回接種の開始は生後2月から生後7月に至るまで。追加接種は生後12月から生後15月に至るまでが標準的な接種期間
- B型肝炎 … 生後2月に至った時から生後9月に至るまでが標準的な接種期間。27日以上の間隔で2回、1回目から139日以上の間隔で1回。対象は生後1歳に至るまでの子ども
- ロタウイルス感染症 … 初回接種は生後2月に至った日から出生14週6日後までの間。ロタリックス(経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン)は2回、ロタテック(五価経口弱毒生ロタウイルスワクチン)は3回
- BCG(結核) … 生後5月に達した時から生後8月に達するまでが標準的な接種期間
- 麻しん風しん混合(MR)第1期 … 生後12月から生後24月に至るまでの間に1回。実施要領は「早期の接種機会を確保すること」と書いています
- 水痘 … 1回目は生後12月から生後15月に達するまでが標準的な接種期間。2回目は3月以上、標準的には6月から12月の間隔
- 日本脳炎第1期 … 初回接種は3歳に達した時から4歳に達するまでが標準的な接種期間。6日以上、標準的には6日から28日の間隔で2回
生後6か月前後で入園する場合、五種混合の初回3回、小児の肺炎球菌の初回、B型肝炎、ロタウイルス、BCGの標準的な接種期間が、入園の前後の時期に重なります。1歳を過ぎて入園する場合は、MRと水痘の1回目が1歳の誕生日から受けられます。
ロタウイルスワクチンだけは期限の扱いが違います。実施要領は、標準的な実施時期を過ぎた未接種者には個別通知で接種勧奨を続けるよう市区町村に求めたうえで、ロタウイルス感染症については出生14週6日後を過ぎた場合はこの限りではないと書いています。初回の接種を始められる期間が決まっているワクチンです。
入園時の書類に予防接種はどう書きますか
母子健康手帳の「予防接種の記録」を見ながら、園や自治体の様式に接種したワクチンと回数を書きます。札幌市の入園時健康診査(満2歳未満の乳幼児)の様式は、保護者が記載する欄に「⑤予防接種歴」を置き、「接種済みのものに○印を付けた上で、カッコ内に接種した回数を記載して下さい」と指示しています。
この様式の予防接種歴の欄に並んでいるのは、次の12のワクチンと「その他」です。
- インフルエンザ菌b型(Hib)、小児肺炎球菌、B型肝炎
- 四種混合、五種混合、BCG
- 麻しん風しん混合(MR)、水痘(水ぼうそう)、日本脳炎
- ロタウィルス、おたふくかぜ、季節性インフルエンザ
読み取れることが3つあります。1つめは、四種混合と五種混合が別の欄で並んでいることです。五種混合ワクチンは2024年(令和6年)4月から定期接種での使用が可能になったワクチンで、それ以前に生まれた子どもは四種混合で受けています。2つめは、定期接種に入っていないおたふくかぜと季節性インフルエンザにも欄があることです。季節性インフルエンザには「6か月以内に接種した場合のみ○印を付け」という条件が付いています。3つめは、カッコ内の回数について「追加で接種した回数を含めて記載して下さい」と書かれていることです。初回と追加を分けずに合計で書きます。
この様式は、太枠内を保護者が書いたうえで、かかりつけの小児科医の診査を受けて保育所へ提出するものです。札幌市の様式には「本入園時健康診査票は健診料、文書料が発生いたします」と書かれています。入園前の健診にかかる費用の扱いは自治体で違うので、入園案内で確認してください。
国の資料と手元の様式でワクチン名が食い違う場面があります。こども家庭庁の保育所における感染症対策ガイドラインは2023年5月に一部改訂された版が最新で、保育所の子どもに重要なワクチンを挙げた箇所は「DPT-IPV(四種混合)ワクチン」と書いています。五種混合という語は、このガイドラインの本文に1か所も出てきません。園から渡される資料が四種混合の表記のままでも、現在の定期接種では五種混合を使って1期の接種をします。手元の母子健康手帳に書かれているワクチン名をそのまま書けば足ります。
予防接種を受けた日に保育園へ行けますか
接種した日に登園できるかを決めた国の基準はありません。川崎市は「予防接種を受けた後の注意事項」として、次の内容を案内しています。
- 予防接種を受けた後30分間程度は、医療機関で様子を確認するか、医師とすぐに連絡をとれるようにしておく
- 予防接種後、生ワクチンでは4週間、不活化ワクチンでは1週間、副反応の出現に注意する
- 接種部位は清潔に保つ。入浴は差し支えないが、接種部位をこすることはやめる
- 接種当日は、激しい運動は避ける
- 接種部位の異常な反応や体調の変化があった場合、速やかに医師の診察を受ける
登園そのものを止める案内は書かれていません。接種当日の激しい運動を避けるという注意があるので、午前に接種して午後から登園するときは、受けたワクチンの名前と接種した時刻を園に伝えてください。プールや戸外での運動をどう扱うかは、園が子どもの様子を見て決めます。
接種の後に熱が出ることがあります。園から呼び出される体温の目安と園の対応は保育園の熱は何度から呼び出し?国の基準と登園の目安にまとめています。感染症で休んだ後の登園に書類が必要かどうかは保育園の登園許可証はいつ必要?感染症別の登園のめやす一覧で確認してください。予防接種の後の発熱は感染症による発熱と扱いが違うので、接種した日と受けたワクチンを連絡帳に書いておくと、園が判断しやすくなります。
受けていないワクチンがあるときはどうしますか
小児科医に相談して、残っている接種の順番を組み直します。こども家庭庁の保育所における感染症対策ガイドラインは、保育所に対して「保護者に対して、未接種ワクチンがあることに気が付いたときには小児科医に相談するよう伝えてください」と求め、標準的な接種スケジュールを逃した場合の接種方法を日本小児科学会が示していることを案内しています。
市区町村の側も動きます。定期接種実施要領は、A類疾病の定期接種で標準的な実施時期を過ぎても接種していない人について、疾病罹患予防の重要性、ワクチンの有効性、発生しうる副反応、接種対象である期間を改めて知らせたうえで、本人と保護者への個別通知等を活用して接種勧奨を続けるよう市区町村に求めています。1歳6か月児健康診査や3歳児健康診査の機会に接種状況を把握することも求めています。接種できる期間が残っていれば、通知が届きます。
仕事を休んで受けに行くのが難しい、という事情はガイドラインにも書かれています。ガイドラインは園に向けて、保護者会などの場で「仕事を休んだ日の帰り道にかかりつけの医療機関を受診して、予防接種を受けるということを促すことも工夫の一つ」と記しています。接種可能なワクチンはできる限り入園前に、入園後も体調が良いときに早めに受けることが大切だという書き方です。
複数のワクチンが残っている場合、同時接種で回数を減らせることがあります。こども家庭庁のガイドラインが書いているのは、注射生ワクチンの接種後に別の注射生ワクチンを接種する場合は中27日以上(4週間)空ける必要があり、医師が特に必要と認めた場合には複数のワクチンを同時に接種できる、という内容です。どう組むかは接種する医師が決めます。
2026年度に変わったことはありますか
小児の肺炎球菌ワクチンが20価に切り替わりました。令和8年6月1日改正の定期接種実施要領は「原則として沈降20価肺炎球菌結合型ワクチンを使用することとするが、当面の間、沈降15価肺炎球菌結合型ワクチンも使用できること」と書いています。手元の母子健康手帳に15価の記載があっても、定期接種として受けた接種です。
RSウイルス感染症が定期接種に加わりました。実施要領は、対象者を「妊娠28週から妊娠37週に至るまでの間にある者」とし、組換えRSウイルスワクチン(妊婦に接種するものに限る)を妊娠期間中に1回接種すると定めています。接種時点で妊娠28週0日から妊娠36週6日と確認できた場合に接種します。生まれてくる子どものRSウイルス感染を防ぐための接種で、第2子以降を妊娠中の保護者が対象になります。市区町村は妊娠の届出の受付時などにあわせて周知することになっています。
この見直しは、2026年2月12日の第64回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会に諮られた内容です。RSウイルス感染症を予防接種法のA類疾病に位置付けることと、高齢者の肺炎球菌感染症の定期接種にPCV20を新たに位置付けることが、そこで示されています。
よくある質問
予防接種を受けていないと保育園に入れませんか
接種を済ませていることを入園の要件とする規定は、予防接種法と国の保育関係の資料に見当たりません。予防接種法第9条は、保護者が定期接種を受けさせるため必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定めています。入園の要件は市区町村と園が決めるので、自治体の入園案内で確認してください。
入園前に予防接種はどこまで済ませればいいですか
こども家庭庁の保育所における感染症対策ガイドラインは「入所前に受けられる予防接種はできるだけ済ませておくことが重要である」と書いています。生後6か月前後での入園なら、五種混合の初回3回、小児の肺炎球菌の初回、B型肝炎、ロタウイルス、BCGの標準的な接種期間が入園の前後に重なります。1歳を過ぎての入園なら、MRと水痘の1回目が1歳の誕生日から受けられます。
予防接種を受けた日は保育園を休ませたほうがいいですか
接種した日の登園を止める公的な基準はありません。川崎市は接種後の注意事項として、30分間程度は医師とすぐ連絡をとれるようにしておくこと、接種当日は激しい運動を避けることを案内しています。登園させる場合は、受けたワクチンの名前と接種した時刻を園に伝えてください。
入園の書類に書く予防接種の記録はどこを見ればいいですか
母子健康手帳の「予防接種の記録」のページです。札幌市の入園時健康診査の様式は「母子健康手帳の『予防接種の記録』を参考にして、接種済みのものに○印を付けた上で、カッコ内に接種した回数を記載して下さい」と案内しています。回数は追加接種を含めた合計で書きます。
おたふくかぜのワクチンは定期接種ですか
定期接種ではありません。こども家庭庁の保育所における感染症対策ガイドラインは、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)ワクチンを任意接種のワクチンとして挙げ、発症や重症化を予防し、保育所での感染の広がりを防ぐ意味で大切だと書いています。任意接種のワクチンは原則自己負担で、接種費用の一部または全部を助成している自治体があります。
出典
- 厚生労働省「定期接種実施要領(改正後全文・令和8年6月1日改正)」(確認日: 2026年11月08日)https://www.mhlw.go.jp/content/001708680.pdf
- 予防接種法(昭和23年法律第68号)e-Gov法令検索(確認日: 2026年11月08日)https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000068
- こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版 2023年5月一部改訂)」(確認日: 2026年11月08日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/e4b817c9-5282-4ccc-b0d5-ce15d7b5018c/c60bb9fc/20230720_policies_hoiku_25.pdf
- 厚生労働省「5種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib)」(確認日: 2026年11月08日)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/dpt-ipv-hib/index.html
- 札幌市「入園時健康診査(満2歳未満の乳幼児)」(確認日: 2026年11月08日)https://www.city.sapporo.jp/kodomo/sengen/documents/2024nyuueinnjikennkousinnsa.pdf
- 川崎市「予防接種を受けた後の注意事項」(確認日: 2026年11月08日)https://www.city.kawasaki.jp/350/page/0000054299.html
- 厚生労働省「令和8年度からの予防接種法関係政省令について(まとめ)」第64回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 資料1-5(確認日: 2026年11月08日)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001654127.pdf
この記事の執筆者: 小泉太郎(ZuMy株式会社 代表取締役CEO)。保育施設の入園書類の電子化を手がけ、園と保護者がやりとりする書類の様式を日常的に扱っています。医療上の判断については、かかりつけの小児科医と市区町村の予防接種担当課に確認してください。
