保育園で子どもが泣く期間について、国が目安を示した資料はありません。保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)に書かれているのは、一人一人の子どもの気持ちを受け止めること、入所した時期はできるだけ個別に対応することです。入園や進級のあとに泣きやすくなる、怒りっぽくなる、食欲が落ちるといった変化は、自治体が保護者向けのしおりで事前に説明しています。
保育園で泣くのはいつまで続きますか
「何日で泣かなくなる」という目安を示した国の資料はありません。自治体が公開しているのは慣らし保育の期間の目安で、その長さは自治体ごとに違います。青森県中泊町は1〜2週間程度、兵庫県芦屋市は1週間程度(最長2週間程度)と書いています。東京都東大和市は期間の数字を書かず、子どもの状況によって異なるので各施設に問い合わせるよう案内しています。
慣らし保育とは、入所した時に通常の保育時間を短縮して行う期間です。中泊町の案内には次のように書かれています。
慣らし保育とは、こども園などに入所した時に1~2週間程度、通常の保育時間を短縮して行う期間をいいます(慣らし保育の期間は子どもの年齢や、園によって異なります。利用を予定している園へおたずねください)。
同じ案内には、1日目は2時間、2日目は3時間と過ごす時間を延ばしていく方法も書かれています。期間と1日の時間の決まりは慣らし保育とは?期間と1日の時間の目安にまとめています。
泣く期間そのものは、資料に答えがありません。自分の子どもの見通しを知りたいときは、慣らし保育の進め方と今の様子を園に聞いてください。慣らし保育が終わっても朝だけ泣く子はいます。中泊町も芦屋市も、期間は園によって異なると書いた上で園への確認をすすめています。
泣いている子どもに保育園はどう対応していますか
保育所保育指針は、泣いている子どもの気持ちを受け止めることを保育の内容として書いています。第1章の「養護に関するねらい及び内容」のうち「情緒の安定」では、ねらいとして「一人一人の子どもが、自分の気持ちを安心して表すことができるようにする」が挙げられ、内容には「一人一人の子どもの気持ちを受容し、共感しながら、子どもとの継続的な信頼関係を築いていく」と書かれています。泣くことを早くやめさせる、という書き方はされていません。
1歳から3歳未満の子どもについては、領域「人間関係」の内容の取扱いにこう書かれています。
思い通りにいかない場合等の子どもの不安定な感情の表出については、保育士等が受容的に受け止めるとともに、そうした気持ちから立ち直る経験や感情をコントロールすることへの気付き等につなげていけるように援助すること。
入所した時期の扱いは、第2章「4 保育の実施に関して留意すべき事項」の「(1) 保育全般に関わる配慮事項」に、年齢を限定しない形で書かれています。「子どもの入所時の保育に当たっては、できるだけ個別的に対応し、子どもが安定感を得て、次第に保育所の生活になじんでいくようにする」という一文です。同じ配慮事項の最初には「一人一人の子どもの気持ちを受け止め、援助すること」が置かれています。
泣いている子どもを放っておく対応は、行政の検査で指摘される側に入ります。東京都福祉局が認可保育所の指導検査結果とともに公開している指摘事例の資料は、「人権の尊重」の項目で虐待・不適切な保育の例を挙げ、その中に「おむつを替えない。泣き続けるこどもに長時間関わらずに放置する。適切な食事を与えない。別室などに閉じ込める、部屋の外に締め出す」と書いています。泣き声が続いていても誰も来ない状態が気になるときは、園に様子を聞いてよい事柄です。
登園の別れ際に泣くときはどうすればいいですか
自治体の資料に書かれているのは、親が帰ることを子どもに知らせてから離れる順番です。芦屋市のしおりは慣らし保育の例として、1日目は午前中に親子で保育を受けて昼食まで、2日目は「親が帰ることを知らせ、お子さんだけで昼食まで保育」、3日目以降は午前中保育から徐々に全日保育へ、という段階を示しています。
泣いたときの関わり方については、船橋市が子育て情報のページ『「泣く」に寄り添う』で3つの点を挙げています。泣くことは「不安や相手に受け止めてほしいという子どもの訴え」だとして、まず受け止めて話を聞くこと、目に見える部分だけで判断せず何を訴えているのか様子を観察すること、泣いた後に気持ちを切り替えられるよう手助けすることです。一緒に食事をしたり遊んだりするだけでも子どもは気持ちを調整できる、と書かれています。
朝に何分付き添うか、どのタイミングで離れるかは、公的資料に書かれていません。園の方針と子どもの様子で決まるので、担任に聞いて家庭と園でそろえてください。朝に行きたがらない状態が続くときの判断は登園しぶりはいつまで?休ませる判断と園への伝え方で扱っています。
入園してから家でも泣くようになりました
入所後に家で泣きやすくなることは、自治体のしおりが入所前の説明として書いている内容です。和歌山県紀の川市の保育所のしおりは、「2.入所に向けて」の冒頭でこう書いています。
今までは、家庭を中心に生活を送っていたお子さんが、家族から離れて集団生活を送ることとなります。初めての環境に戸惑い、緊張感から心身共に疲れが出る、泣きやすくなる、怒りっぽくなる、食欲がなくなるなどの変化があるかもしれません。
同じしおりは、新入児が初めから長時間保育になると負担が大きいとして、午前中の保育から徐々に延ばす「なれ保育期間」を置くと書いています。東大和市の入園案内も、小さな子どもにとって新しい環境で知らない人と一緒に過ごすことは大変なストレスになると書き、不安感をやわらげるために「なれ保育」を実施すると説明しています。
家での様子は、園に伝わると保育の中で使われます。指針は入所時に「できるだけ個別的に対応」すると書いていて、その個別の材料は保護者からの情報です。寝つきが悪い、夕方に泣き続ける、食欲が落ちた、といった変化は連絡帳か送迎時に伝えてください。書き方は保育園の連絡帳は何を書く?年齢別の書き方と項目にまとめています。
泣き方が普段と違うときに見るところはありますか
こども家庭庁の「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン」は、窒息を発見したときのサインを意識の有無で分けて示しています。意識がある場合に挙げられているのは「咳込む」「苦しそうに泣く」「しゃべれる(苦しいよ等)」で、意識がない場合は「呼びかけに反応しない」「チアノーゼ」などです。食事中や午睡中に泣き方が普段と違うときは、園が窒息を想定して確認する場面にあたります。
体調が理由で泣くこともあります。熱があるときの連絡の基準は園ごとに決まっていて、国が一律の体温を定めた資料はありません。詳しくは保育園の熱は何度から呼び出し?国の基準と登園の目安と保育園で熱はないのに咳で呼び出される理由で扱っています。泣き方から病気を見分ける方法は公的資料にありません。普段と違うと感じたら、園の看護師や担任に伝えて、受診の必要があるかは医療機関で確認してください。
家で泣き止まないときの対処を国は示していますか
厚生労働省の「標準的な乳幼児期の健康診査と保健指導に関する手引き」は、どうしても泣き止まない場合の対処として、赤ちゃんを安全な場所に寝かせて、その場を離れて自分がリラックスする方法を保護者に伝えると書いています。背景として、泣きやませようとしても泣き止まない乳児に特有の泣き行動(パープル・クライング)があり、泣きをコントロールできないことへの焦りやイラつきが激しい揺さぶりにつながる、と説明されています。
同じ手引きは、乳児への「揺さぶり」が3〜4か月児健診時のアンケート調査で3.9%発生していたデータ(回答6,590名、平成24年、愛知県)を挙げ、国内外のデータでも2.5〜3.5%程度で稀ではないと書いています。3〜4か月児健診の必須問診項目には、激しく揺さぶることで脳障害が起きること(乳幼児揺さぶられ症候群)を知っているかを問う設問が入っています。
保育園に通い始めた0歳児の家庭にも、この対処はそのまま当てはまります。泣き止まないまま抱き続けて限界が近いと感じたら、安全な場所に寝かせていったん離れる方法が、国の手引きに書かれた対処です。園の連絡帳や地域の子育て相談窓口に、家で泣き止まない状態が続いていることを書いて相談してください。
よくある質問
保育園で泣く期間に国の目安はありますか
ありません。保育所保育指針にも自治体のしおりにも、泣かなくなるまでの日数は書かれていません。自治体が示しているのは慣らし保育の期間の目安(中泊町1〜2週間程度、芦屋市1週間程度・最長2週間程度)だけで、その期間も園によって異なると明記されています。
泣いている子を保育士が放置することは認められていますか
認められていません。東京都福祉局が公開している認可保育所の指導検査の指摘事例では、「人権の尊重」の項目で虐待・不適切な保育の例として「泣き続けるこどもに長時間関わらずに放置する」が挙げられています。気になる場面があれば、園に直接確認してください。
迎えに行くと泣くのはなぜですか
理由を説明した公的資料はありません。保育所保育指針は、子どもが自分の気持ちを安心して表せるようにすることを「情緒の安定」のねらいに挙げています。その日の過ごし方や体調で変わるので、園での様子を担任に聞いてください。
泣かない子は心配ですか
泣く・泣かないを発達の目安として示した公的資料はありません。保育所保育指針は一人一人の発達過程を踏まえて保育することを基本にしています。気になる点があれば、園の面談や自治体の乳幼児健診で相談してください。
著者
小泉太郎(ZuMy株式会社 代表取締役CEO)。保育施設の入園書類のオンライン化サービスを提供し、自治体や園が公開する保育の資料を日常的に読んでいます。本記事は公的資料の原文を確認して書いています。
出典
- 保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号)/厚生労働省(確認日: 2026年11月07日)https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00010450&dataType=0&pageNo=1
- 指導検査における主な指摘事例と改善策等について/東京都福祉局(確認日: 2026年11月07日)https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/fukushi/R6-02
- 慣らし保育について/青森県中泊町(確認日: 2026年11月07日)https://www.town.nakadomari.lg.jp/material/files/group/7/narashihoiku20231109.pdf
- 令和7年度 保育所・認定こども園等のしおり/兵庫県芦屋市(確認日: 2026年11月07日)https://www.city.ashiya.lg.jp/kodomo/nyusyo/documents/r7shiori.pdf
- 保育所のしおり/和歌山県紀の川市(確認日: 2026年11月07日)https://www.city.kinokawa.lg.jp/027/files/hoikunoshiori.pdf
- 令和9年度 認可保育園等の入園案内/東京都東大和市(確認日: 2026年11月07日)https://www.city.higashiyamato.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/272/r9annai.pdf
- 『「泣く」に寄り添う』/千葉県船橋市(確認日: 2026年11月07日)https://www.city.funabashi.lg.jp/kodomo/support/002/3naku0310.html
- 教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン/こども家庭庁(確認日: 2026年11月07日)https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/03f45df9-97e1-4016-b0c3-8496712699a3/39b6fd36/20230607_policies_child-safety_effort_guideline_02.pdf
- 標準的な乳幼児期の健康診査と保健指導に関する手引き/厚生労働省(確認日: 2026年11月07日)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/tebiki.pdf
